Nelson Veras - 「NELSON VERAS」
今年5月に待望の初来日を迎えるブラジル人ギタリストのネルソン・ベラス。彼を知ったのはつい最近で、彼の作品を聴くのは今作が初である。
ナイロン弦を爪弾くスタイルであるが、その内容はコンテンポラリー。リズミックなアプローチで緊張感溢れるインプロを聴かせてくれる。彼の十八番とも言えるドラムとのデュオは、正にリズムの応酬で圧巻である。
穏やかでメロディアスな曲では、曲のイメージを大事にしつつもアクセントに早いパッセージを上手く含ませている。
本作はタイトルのように、いわば彼の自己紹介といったところであろうか。彼の様々な一面を満遍なく楽しむことができる。
冒頭の「Rascunho」は嵐の前の静けさのような穏やかで緊張感のある小曲。アルバムの始まりを感じさせる。
「How deep is the ocean」のドラムとのデュオは正に圧巻。卓越した技術・リズミカルで緊張感溢れる演奏が堪能できる。とはいえ音が自然に溢れ出してくる彼のインプロは、テクニカル面より芸術性が際立っている。
「Francisca I」ではギターとフルートが絶妙に絡み合い、二人で呼吸をしているかのよう。フルートを吹く際に声を出す事でフルートとハモるという奏法も面白い。
「E lucevan e stelle」はルチアーノ・パヴァロッティ作のクラシックである。彼のアレンジで全く新しい雰囲気に仕上がっている。女性ボーカルが力強く、切なく歌い上げていて非常に美しい。
Wayne Shoterのナンバー、「Ana Maria」ではソロギターを聴くことができる。ネルソンのセンスで原曲とは全く異なる美しさを感じとれた。
また、アルバムを通してベースレスである事も特徴的である。各楽器が作りあげる空間をより楽しむことができる。演奏技術、インプロビゼーション、ブラジル音楽をベースとした作編曲。彼の様々な才能を感じることができる作品である。
NELSON VERAS(g),MALIK MEZZADRI(fl,vo),STEPHANE GALLAND(ds),HARMEN FRAANJE(org,fender rohdes)